T-Engineフォーラムおよび傘下のユビキタスIDセンターでは、2009年もさまざまな活動を実施しました。またT-Engineフォーラム会員各社の積極的な活動により、T-Kernelを搭載した事例も着実に増えています。ここでは2009年のトピックをいくつかご紹介したうえで、各ページで、さらに国内外でのさまざまな活動をご紹介いたします。
2009年のT-Engine/T-Kernel
■MP T-Kernelの公開

今年、組込み業界でトレンドとなった言葉を1つあげるとしたら「マルチコア」があります。CPUの省電力と高機能の両立を図るこの技術について、T-Engineフォーラムでは早くから研究・開発を続けてきました。
そして2009年3月26日に、マルチコア対応のT-Kernelを、AMP T-KernelとSMP T-Kernelとして一般公開しました。続いて5月12日には、それぞれに対応したStandard Extensionとして、AMP T-Kernel Standard ExtensionとSMP T-Kernel Standard Extensionも一般公開しました。
現在、T-EngineフォーラムではAMP T-KernelとSMP T-Kernelを統一したMP T-Kernelの研究・開発を進めています(図1)。
また、MP T-Kernelの開発・評価を行うための「MP T-Kernel/NE1評価ボード」(パーソナルメディア社製)が2009年6月から一般向けに発売され、開発環境も急速に整いつつあります(図2)。
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図1 T-Kernelのロードマップ 
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図2 MP T-Kernel/NE1評価ボード |
■T-Licenseの改定

T-Engineフォーラムから公開しているT-Kernelは、「T-License」というライセンスを承諾した利用者に対して、ダウンロード方式で配布しています。T-Kernel Standard ExtensionやAMP T-Kernel、SMP T-Kernelと、これらに対応した各Standard Extensionも、このT-Licenseを準用するライセンスで配布しています。
このT-Licenseを、2009年3月24日付で改定しました。従来のT-Licenseに比べて今回の改定のポイントは次の4点です。
- 標準T-EngineやμT-Engineというハードウェアの存在を必須条件としていた規定を見直しました。
- さまざまなCPUやコンパイラで動作するようにT-Kernelを移植した場合に、その成果を円滑に流通できるようにしました。
- 利便性を高めるため、ヘッダファイルの配布ができることを明記しました。
- 「できないこと」だけでなく「できること」も明記して、わかりやすさに努めました。
現実社会の法制度も、技術の進展や運用の変化に合わせて変えていくものです。もともとT-Licenseは組込み業界特有の事情を勘案したライセンスになっていますが、T-Kernelの普及の拡大や、MP T-Kernelという新しいT-Kernelの開発と一般公開に伴い、利用者のご意見を反映して改定しました。
これからT-Kernelの利用を検討している方だけでなく、すでに以前のT-Licenseでダウンロードした方も、改定されたT-Licenseのもとで再度T-Kernelをダウンロードして、ぜひとも積極的にT-Kernelの利用を推進してください。
■増えるT-Kernelの採用

2009年欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した独オペル車に、T-Kernelを搭載したボッシュ社のカーナビ「DVD 800 Navi」が採用されました。このほか、増える搭載事例をまとめて紹介します。
●セイコーエプソン
カラリオ
マルチフォトカラリオのプレミアムFAX搭載モデル「EP-901F」(図3)、プレミアムモデル「EP-901A」、おすすめモデル「EP-801A」に「eT-Kernel Multi-Core Edition」(イーソル社製)が搭載されました。

図3 カラリオ プレミアムFAX搭載モデル「EP-901F」
●フォスター電機フォステクスカンパニー
ライブレコーディングミキサー「LR16」
小中規模のライブやトークイベント用の音響機器「LR16」に「eT-Kernel」(イーソル社製)が搭載されました。画面表示や操作キーのユーザインタフェースの制御、録音・再生時のファイルシステムやストレージの管理、USBやコントロールユニットとの通信などをT-Kernelで制御しています(図4)。

図4 ライブレコーディングミキサー「LR16」
●JAXA
小型実証衛星1号 SDS-1
独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2009年1月に打ち上げた「小型実証衛星1号(SDS-1)」に搭載された超小型宇宙実験プラットフォーム「スペースワイヤ実証モジュール(SWIM)」に「eT-Kernel」(イーソル社製)が搭載されました。スペースワイヤ(SpaceWire)は日米欧露などの各国宇宙機関やメーカが規格の標準化・管理を行っている次世代衛星バス通信規格で、SWIMにはSpaceWireを用いたコンピュータの宇宙実証を目的としてeT-Kernelが搭載されたSpaceCube2が内蔵されています(図5)。

図5 SpaceCube2
©宇宙航空研究開発機構(JAXA)
2009年のucode/ユビキタスID技術
■認定タグ

ユビキタスIDセンターでは、ucodeの割り当てを行うだけでなく、ucodeタグとして申請されたRFIDタグの認定作業を行っています。2009年に新しく認定されたタグを紹介します。
●銘板型インメタルICタグ
金属と水に強い長波帯(125KHz)を利用したRFIDタグ(株式会社ハネックス製)を、新たにucodeタグとして認定しました(図1)。ステンレスまたはアルミの外装の中にリード/ライトが可能なHitagSというチップを搭載したタイプと、リードオンリーのUniqueというチップを搭載したタイプとがあります。工具や金型、製造装置といった金属でできた物品の管理に利用できるほか、屋外で使用される機器などに貼付することで、管理や保守などに利用できます。

図1 銘板型インメタルICタグ
●Britem
粘着ラベルタイプのICタグ(リンテック株式会社製)を、新たにucodeタグとして認定しました(図2)。幅30mm×長さ20mmと小瓶などに貼付できるTS-L102LCと、幅55mm×長さ35mmと十分な印字スペースのあるTS-L102NCの2種類があります。

図2 Britem
認定タグの最新情報については、ユビキタスIDセンターのウェブサイトでご確認ください。
■ユビキタスID関連技術の公開

YRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、ユビキタスIDセンターの活動へ技術的な寄与を行うほか、T-Engineフォーラムの幹事会社でもあります。
同研究所は2009年に、T-Engineフォーラム会員向けに次の3件のユビキタスID技術を先行公開しました。このうちの「ucoder」はすでに一般公開が済み、他も順次、公開する予定です。
●ucoder(汎用ucode情報サービス)
誰でも手軽にucodeを発行し、それに情報を紐付けることのできるシステムとして、「ucoder」という汎用ucode情報サービスを、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所のウェブサイトで一般公開しています(図3)。
このシステムでは、ucoderにアカウント登録をすると、最大100個までucodeを発行できます。アカウント登録者に発行されたucodeは、誰にも永久に使い回されることのない、アカウント登録者のためだけの唯一無二の番号です。
このucodeに対して文字情報やウェブのURLといった、さまざまな情報を紐付けることで、現実世界のモノや空間を識別できるようにする仕組みが、ucoderです。ucoderで紐付けた情報は、ucodeQRと呼ばれる電子署名付きの二次元バーコードの一種に載せることができます。紐付けられた情報を閲覧する場合は、バーコード読取機能付きの携帯電話などで手軽に確認ができます。ucoderで紐付けられた情報そのものは、ウェブ上に用意しておきます。
このため、情報を提供する場合はウェブ上のデータを更新するだけで、ucodeQRを閲覧する人は誰でも最新の情報を見ることができる、というメリットがあります。
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図3 ucoderの初期画面 
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●ユビキタス場所情報データベース
「ユビキタス場所情報データベース」とは、ucodeを用いて、地図上の場所と、それに関連するコンテンツとを結びつけて、利用者に適した形で情報を提供するための基盤となるプラットフォームです(図4)。
ucodeには「ucode関係モデル(ucRモデル)」と呼ばれる、ucode間の関係を定義できる機能が用意されています。この機能を用いて、「名称」「座標」「場所情報提供者」といった場所に関する属性情報を定義したり、「タイトル」「概要説明」「コンテンツ登録者」といったコンテンツの定義をしたりできます。
この機能を利用したアプリケーションが「ユビキタス場所情報データベース」で、場所に関連したコンテンツの登録と編集、閲覧をするためのアプリケーションです。2009年7月から、T-Engineフォーラムの会員を対象に試験公開をしています。
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図4 ユビキタス場所情報データベース 
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●ucode解決クライアントライブラリ
ユビキタスIDセンターが提供しているucode解決サーバのucode解決機能を、クライアント側で実施するためのC言語ライブラリソフトウェアが「ucode解決クライアントライブラリ」です。2009年6月からT-Engineフォーラムの会員を対象に、LinuxとWindowsで動作するライブラリをバイナリで提供しています。
■ucodeの利活用事例

●東京ユビキタス計画2009
東京都と国土交通省が主催し、全銀座会が協力している「東京ユビキタス計画2009」が、2009年2月10日(火)から3月6日(金)にかけて実施され、T-Engineフォーラムの会員団体が多数参加しました(表1)。
2009年10月15日〜2010年3月31日の間に行われる実証実験は、“平成21年度「東京ユビキタス計画」”と呼んでいます。
表1 「東京ユビキタス計画2009」公募実験選定結果
企業名 |
実験名称 |
| I <タグなどの機器類> |
| 1 |
カラージップジャパン株式会社 |
「カラーコード」技術によるユビキタスIDの普及と商用化 |
| 2 |
富士通株式会社 |
「FPcode」を利用した、銀座のまちのナビゲーション |
| 3 |
日本電気株式会社 |
携帯端末を利用した情報配信サービス実験 |
| II <システム> |
| 4 |
沖電気工業株式会社 |
「eおとエンジン」を利用した自律移動支援実験 |
| 5 |
パーソナルメディア株式会社 |
ucodeの場所情報を活かす携帯端末向けUIの実験 |
| 6 |
日本ユニシス株式会社 |
「スマートシステム」の実用化検証 |
| 7 |
日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社 |
ユビキタス機器向け組込みデータベース応用実験 |
| III <サービス> |
| 8 |
株式会社横須賀テレコムリサーチパーク
株式会社ぐるなび |
目的・状況認識に応じた提供情報最適化実験 |
| IV <保守・管理> |
| 9 |
凸版印刷株式会社
株式会社パスコ |
場所情報提供ucodeタグ維持管理に関する検証実験 |
| 10 |
住友大阪セメント株式会社 |
建造物等の品質、維持管理に係わる実証実験 |
| 11 |
ユーシーテクノロジ株式会社 |
都市基盤インフラ履歴管理プロバイダサービス実験 |
●奈良自律移動支援プロジェクト
2009年1月20日(火)〜2月8日(日)の期間、国土交通省近畿地方整備局と奈良県が、奈良公園周辺で「奈良自律移動支援プロジェクト」を実施しました。電波マーカやRFIDによるucodeの情報をUCで受けることで、目的地までの移動経路を知らせるサービスや、音声による観光ガイダンス、観光地や店舗の情報を提供するサービスを提供しました。
●“飛騨高山”自律移動支援プロジェクト実証実験
2009年2月14日(土)〜3月1日(日)の期間、国土交通省と高山市が連携して、JR高山駅前から高山市内の“古い町並み”や“高山陣屋”の実験エリアで「“飛騨高山”自律移動支援プロジェクト実証実験」を実施しました。現在位置情報、周辺施設情報、経路検索、移動案内、注意喚起などのほか、音声ガイドによる観光情報を提供しました。
●豊田地区自律移動支援プロジェクト
2009年2月9日(月)〜2月22日(日)の期間、豊田市駅、新豊田駅周辺を実験エリアとして「豊田地区自律移動支援プロジェクト」が行われました。複雑な移動ルートに対応するため、位置特定のためのインフラを密に設置しました。
●ぷらっとPlat@まつやま
2009年1月28日(水)〜2月15日(日)の期間、経済産業省の「情報大航海プロジェクト」の一環として、愛媛県松山市で「ぷらっとPlat@まつやま」実証実験が行われました。ucodeタグとUCを用いた「今だけ、ここだけ、あなただけ」の観光情報配信を行いました。
●神戸地区自律移動支援プロジェクト実証実験
2009年2月6日(金)〜2月26日(木)の期間、国土交通省近畿地方整備局と神戸市保健福祉局が連携して、三宮駅周辺と南京町とを結ぶ広範囲なエリアで実証実験が行われました。本実験に参加したYRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、シームレスかつバリアフリーな経路案内、個人属性に応じた多様な移動支援サービスや情報提供などを行いました。
●桜島火山爆発総合防災訓練
2009年1月14日(水)に、鹿児島市が主催した「桜島火山爆発総合防災訓練」において、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は「ucode対応のICタグを使用した避難住民の管理」と「UCを用いた被災地の状況報告」の訓練実験を実施しました。
●「ユビキタスてぶら観光」実証実験
2009年2月13日(金)〜2月26日(木)の期間、神戸市とユビキタス空間基盤推進協議会は、総務省の委託事業である「地域ICT利活用モデル構築事業」において交流・観光をテーマにした観光客等支援モデルの実証実験として、旅行者を対象に土産物のホテルへの配送や観光客の回遊性向上を目的に「ユビキタスてぶら観光」実証実験を実施しました。
●今井町ユビキタス計画
2009年10月9日(金)〜12月13日(日)の期間、国土交通省と今井町ユビキタス計画協議会が主催して、奈良県橿原市今井町の重要伝統的建造物群保存地区内で「今井町ユビキタス計画」が実施されています。ルート案内、施設案内、位置情報、店舗情報などの情報提供サービスを受けることができます。
●住宅履歴情報管理システム
住宅の維持・保全にかかわる計画の認定などを行う「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が2009年6月4日(木)に施行されたことに伴い、住宅履歴情報が持つべき唯一性と、建材・部材データベースや設備機器などのトレーサビリティシステム、行政のデータベースとの紐付けを行うことができる仕組みを持つことから、ucodeが住宅履歴情報を管理するための共通IDとして用いられることになりました。
●e-地域資源活用事業
財団法人地域総合整備財団(「ふるさと財団」)では、「空間情報基盤システム」を活用して、地域の観光情報を共通テーマで連携して情報発信する「共通プラットフォーム」を提供しています。自治体間をまたがる共通テーマでの情報を発信するために、ふるさと財団が「e-地域資源活用事業」としてucodeをベースに提供しているのが、この「共通プラットフォーム」です。
●「u-home」TRONハウス台湾にオープン
2009年8月、TRON電脳住宅としては3番目のモデルルーム「u-home」が台湾・台北市内にオープンしました。T-EngineとユビキタスID技術をふんだんに盛り込んだものとなっています。
●アクティブタグを用いた通い容器ロケーション管理システム実証実験
T-Engineフォーラムは、農林水産省の「平成20年度食品産業競争力強化対策事業 食品流通効率化対策事業」の一環として、2009年2月1日(日)〜2月28日(土)の期間、株式会社イトーヨーカ堂、横浜市場センター株式会社、横浜丸中青果株式会社、横浜ロジスティクスサービス株式会社と共同で実証実験を実施しました。実験に使用したucodeアクティブタグは温度センサーを内蔵して温度計測をすることができます。