財団法人ベターリビング
■ユビキタスな「200年住宅」
少子高齢化の進展による国民負担の増大や、地球環境問題、廃棄物問題が深刻化する中で、「つくっては壊す」フロー消費型社会から、「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」ことによって、保有する住宅資産の長期的価値の維持向上を目指すとともに、それにより国民の実質的な住居費負担を抑制し、物心ともにゆとりのあるストック型社会への転換が急務となっています。
このような中で、住宅政策において「住生活基本法」(2006年6月 制定)の趣旨に立脚し、超長期にわたって多世代が利用できる質の高い住宅ストック、200年住宅と呼ばれる住宅のストック形成が推進されています。
200年住宅を実現するためには、耐久性・耐震性に優れた住宅を建設する必要がありますが、世代を越えた様々な人が超長期に渡り住宅を利用することとなるため、適切な点検、補修等の維持管理やリフォーム工事を継続的に行うだけではなく、実施した工事の情報についても確実に維持してゆくことが必要となります。
ところが、それらの情報の本来の所有者である住宅所有者や居住者には、工事の情報等は専門的であることに加え、膨大な量の情報を蓄積することとなるため、活用することが困難となる等の課題もあります。
また、円滑な住宅流通や計画的な維持管理等を可能とするためには、新築、改修、修繕、点検時等において蓄積された設計図書や施工内容等の情報が、いつでも活用できるユビキタスなインフラストラクチャーとしての仕組みを整備し、住宅所有者や居住者を支援していくことが求められています。

■「200年住宅」実現に必要不可欠な住宅履歴書システム
住宅の長寿命化を実現し、200年住宅において情報を確実に管理してゆくには、住宅のライフサイクル、即ち、契約・設計、施工、竣工・引き渡し、修繕・点検のそれぞれの段階で情報を蓄積することが必要となってきます。
住宅の契約・設計段階では、地盤調査報告書などの調査関係書類、設計委託契約書や建築工事請負契約書などの契約関係図書、設計図書や構造計算書などの確認申請書類、型式部材等製造者認定書・適合証明書や設計住宅性能評価書などの性能保証・性能表示関連書類といった情報があります。
施工段階では、施工状況報告書、くい打ち工事報告書、配筋の検査記録、電気設備図、給排水設備図、業者一覧表、建設住宅性能評価書などの施工図面や施工関連書類、施工写真といった情報があります。
竣工・引き渡し段階では、引き渡し書、施工引き渡し確認書、設備や機器の取扱説明書、保証書といった情報があります。
修繕・点検の段階では、日常的な維持管理記録、修繕改修工事に関する図書・写真・記録、長期修繕計画書といった情報があります。
このように、住宅履歴に係る情報量は膨大であり、これらを適切かつ円滑に利用・活用するには、履歴情報を蓄積することを目的にした「住宅履歴書システム」が必要となります。

■ユビキタスな「200年住宅」を実現するための要件
ところで、住宅履歴情報の登録は、本来の情報所有者である住宅所有者や居住者が情報登録することが理想ですが、住宅所有者や居住者では、専門的かつ膨大な情報を、住宅履歴書システムに登録することは困難であると言わざるを得ません。
このため、住宅所有者や居住者から委託された者が、与えられた権限の範囲内で、住宅履歴書システムに情報登録を行うこととなりますが、情報の確かさと漏洩を防ぐため、ID番号等により住宅履歴書システムへのアクセスを厳重に管理し、違反した者には罰則を設ける等の対策を施しておく等の仕掛けが必要となります。
従って、住宅履歴書システムは、住宅所有者や居住者が安心して使用できること、また、登録等を安心して任せられることが大切だといえます。
安心して使用することができる住宅履歴書システムが開発されれば、様々なシーンで、便利に使用することができるようになります。
加えて、住宅履歴書システムに登録された情報は、住宅所有者や居住者が情報の登録や閲覧を、いつでも可能な状態としておりますが、住宅所有者等が点検やリフォーム、そして転売の際に関係者に住宅履歴書システムを利用可能な状態にすることで、様々なメリットが生じます。
例えば、点検の際には、点検者が事前に住宅履歴書システムに登録された点検記録を参照することで、確実な点検作業を行うことが可能となるだけでなく、点検の結果修繕等が必要となった際に適切な修繕を実施することが可能となります。
また、リフォームでは、リフォーム業者は住宅履歴書システムに登録されたリフォーム対象部位の周辺を含めた部材や部品の情報を参照することで、これまでのリスクを見込んだ高めの見積書ではなく、適正価格での見積書作成ができ、住宅所有者にとっても安心して工事を任せることができるようになります。
さらに、転売や引き継ぎ等で住宅所有者が変わる場合には、不動産業者は住宅履歴書システムに登録された履歴情報に基づき住宅価格を算定することとなり、安心して既存住宅を取引することが可能となります。
しかし、このように便利で安心して使用できる住宅履歴書システムですが、蓄積される情報のもととなる、設置される住宅部品や、その設置工事に信頼性が必要となります。従って、安心できる住宅部品を使用し、適切な方法で設置し、その実施した内容を住宅履歴書システムに登録することが大切だといえます。

■住宅履歴書システムを支える住宅部品のトレーサビリティ管理システム
安心できる住宅部品を使用し、適切な方法で設置したことを実現する手段として、トレーサビリティ管理が重要といわれています。履歴を追えることが、信頼性の確保と安心につながるからです。
さて、当財団では、住宅履歴書システムを構成するデータベースの一つとなりうる「住宅部品のトレーサビリティ管理システム」を、2007年2月から、BL-bs部品として認定された住宅用火災警報器で運用しています。住宅用火災警報器は、1住戸に何個も設置されることとなりますが、入居者による設置拒否や機器の故障による交換等が発生することから、機器の設置や交換を管理することが重要となるからです。
BL-bs部品として認定された住宅用火災警報器は、10年ごとの交換を行うことが必要となりますが、住宅部品のトレーサビリティ管理システムを活用することにより、住宅管理者は、定期交換を確実に行えるだけでなく、途中で交換、修繕した場合も履歴として残るので、適正な維持管理が実現できることとなります。
この結果、住宅用火災警報器がどの住戸のどの部屋に設置されているという「設置情報」は、2007年10月時点で、当財団のサーバーに約30万個分登録されており、その情報量は日々増加しています。
ところで、住宅部品のトレーサビリティ管理システム運用から6ヶ月経った2007年8月、住宅用火災警報器のメーカーから当財団に、「BL-bs部品」として出荷した製品約25万個に「BL-bs部品」として認定されていない製品が混入してしまい、それがどこの住宅に設置されたか分からないとの情報が寄せられました。
このような場合、従来であれば、住宅用火災警報器を設置した住宅を1軒1軒回って、該当製品を探すということになりますが、当財団のトレーサビリティ管理システムを活用していたので、わずか数分で設置場所を特定することができました。
これにより、住宅管理者にとっては居住者の安全・安心を確保でき、メーカーにとっては該当製品を探し当てるために要する費用と時間を大幅に軽減できるということが実証されました。
当財団では、住宅部品のトレーサビリティ管理システムが、リコール対策や履歴情報管理に有効であることから、今後全ての住宅部品に展開していき、200年住宅を実現する上で必要となる「住宅履歴書システム」を構成するデータベースの一つに寄与できるように進めてまいります。

■財団法人ベターリビングとは
財団法人ベターリビングは、国民の住宅に対するニーズが量から質へ変化しつつあった1973年に、建設大臣の許可を得て設立されました。
以来、優良な住宅部品の開発・普及を中心として、住生活水準の向上に資することを目的としたさまざまな活動を進めてきました。
活動の柱となっている「優良住宅部品認定事業」※等を実施するとともに、調査研究や技術開発、およびこれらの成果の普及・広報活動、各種情報提供、さらに「筑波建築試験センター」や住宅および住宅部品に関するあらゆる基準への適合性を評価し、認証を行う「住宅評価センター」および「住宅部品評価センター」を設置するなど、住宅に関する広範な事業を展開しています。
- ※ 安全で快適な「住まいづくり」のために、品質・性能及びアフターサービス 等に優れた住宅部品を「BL部品」として認定しています。特に、社会的要請への対応を先導するような特長もあわせて有する住宅部品を「BL-bs部品」(BL-bs:Better Living for better society)として認定しています。