■『電脳コンクリート』の開発
住友大阪セメントは、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所と共同で、『電脳コンクリート』の開発に成功しました。
2004年11月16日、東京大学安田講堂で「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」をテーマとしたシンポジウムが開催されました。坂村健教授(東京大学大学院情報学環副学環長)の「ユビキタス場所情報システムの可能性」と題した基調講演に始まり、坂村教授をコーディネーターとして、大石久和理事長((財)国土技術研究センター)、川嶋弘尚教授(慶応義塾大学)により行われたパネルディスカッションで、ユビキタス場所情報システムを活用した次世代社会資本整備について議論がなされました。まさにこの日が電脳コンクリートのスタートになりました。
2006年10月、国土交通省は、国土交通分野における「イノベーション25」について大綱をまとめるにあたり、民間に技術公募を行いました。住友大阪セメントは『電脳コンクリート』で応募しました。その結果、「第4回国土交通分野イノベーション検討委員会」において、プレゼンテーションの機会を得ました。2007年5月25日「ICTが変える、私たちの暮らし〜国土交通分野イノベーション推進大綱〜」が策定され、イノベーション25に向けたツールとしてICTの積極的活用、ならびに共通基盤の構築が大切であるとされました。
ICタグやセンサーを公共施設や建物など(場所)や、貨物や住宅部品など(モノ)に設置し、地理空間情報をはじめとした様々な情報と有機的に結びつけることにより、これからの社会資本整備・管理の効率化・高度化、ヒトの移動の支援など、多様で新しい社会基盤が出来ます。
住友大阪セメントがいま、『電脳コンクリート』でご提案するのは、身近な生活空間において「いつでも、どこでも、誰でも」必要な情報を入手することができる環境を作ること。住宅の履歴情報を『電脳コンクリート』によって整備し、住宅等の長寿命化と適切な維持管理及びリフォームに貢献すること。そして、「安全・安心」、「経済発展のための効率よい経済活動の可能な国づくり」に貢献していきたいと住友大阪セメントは考えています。

■技術紹介
「コンクリートの品質管理への適用」
現在のコンクリートは、超高層ビルや大型構造物などのニーズに合わせて、セメント、砂利、砂、水と数種類の混和材料が加えられています。その組み合わせは、今や高度化、多様化しています。
生コンクリート製造工場では、製造された生コンクリート(生コン)の品質を圧縮強度で確認し、管理しています。圧縮強度試験に使用する供試体と呼ばれるコンクリート試験体は、通常φ100mm×h200mmの円筒形です。大きな生コン工場では、一日に100本以上の供試体を作成しています。供試体は28日間水中で養生されるため、養生水槽には2000本以上(100本×20日)の供試体が保管されていることになります。また、圧縮強度の測定についても1日に100本以上を試験することになります。
〜今までは〜
供試体を成形する型枠に生コンを入れ、1日後に型枠から脱型した際、供試体に手作業で識別記号を記載していました。また、圧縮強度を行う際には、養生水槽の中にある2000本以上の供試体の中から、識別記号を頼りにその日に試験を行う供試体を探し当てる。さらには、強度試験を実施したあとも、データの記入、取りまとめなどがアナログ作業で行われていました。
〜これからは〜
住友大阪セメントが開発した『電脳コンクリート』による供試体管理システムでは、供試体に「ucode」を格納しています。生コンの製造情報は、「ucode」によって紐付けられた管理サーバーに保管され、いつでも、どこでも、ユビキタス・コミュニケータによって確認することができます。これまでのように、識別記号を供試体に記載する工程がなくなりました。また、「ucode」に関連付けた位置情報として、養生水槽内の供試体の位置をも任意に確認できるようになり、供試体を探す手間もなくすことができました。供試体の1本1本を「ucode」によって識別できますので、強度試験後のデータ整理、取りまとめが簡便で確実に行えます。
このように、セメント・コンクリートの分野にユビキタス・コンピューティングの技術を応用することによって、供試体管理で行われているアナログ作業の省力化、試験の効率化と試験精度の向上を可能にしました。

「生コン輸送車管理への適用」
生コン輸送車のドアに『電脳コンクリート』を取り付け、生コン工場の出口ならびに納入現場の入口などでユビキタス・コミュニケータを用いた情報の伝達を行います。これにより、出荷時間、到着時間の管理を行うことができるほか、配車の効率化などに繋げることができます。また、輸送車の管理データベースに、納入先、材料、配合などを登録しておくことで、現場に納入されるコンクリートの品種も確認できるようになります。
さらに、供試体管理データベースと輸送車管理データベースとを紐付けすることで、生コンクリートの製造・品質管理・出荷・納入といった工程のトレースが可能になり、作業の効率性、製品の信頼性向上に寄与するトータル管理システムが構築されました。

「コンクリート製品への応用」
コンクリート製品の製造から施工までの間には、多くの工程があります。(コンクリート製品とは、管理された製造工場内で作られる、工場製品のコンクリート。ボックスカルバートやL型擁壁など。)具体的には、材料、練混ぜ、品質管理試験、鉄筋の種類や配筋など材料に関するもの。蒸気養生やオートクレーブなど養生条件に関するもの。強度や寸法、耐荷重など構造設計に関するもの。出荷納品に係わるもの。さらには検査やその後のメンテナンス情報など、があります。それぞれのデータは一つの企業・機関、または複数の実施者が試験、収集しデータベースとして保有しています。『電脳コンクリート』の技術を応用することにより、複数の実施主体がひとつの「ucode」を介して、それぞれのデータベースに紐付けすることが可能となります。製造業者や運搬業者さらにはコンクリート製品の購入者が、製造工程の中間あるいは施工後のコンクリート製品そのものから履歴がたどれ、品質の確認ができる、「コンクリート製品トレーサビリティシステム」が構築されました。

「建築物・社会資本への応用」
これらのシステムを総合的に組み合わせ、ビルやマンションなどの定礎などに利用したものが『電脳コンクリート ICTコンクリートパネル』です。
建築物に使用された建築材料の情報以外にも、設計やメンテナンスに関する情報など「ICTコンクリートパネル」に格納された「ucode」から紐付けられる情報は、膨大な量になります。しかし、最近では、記憶媒体の小型化が進み、膨大な量の情報を保管できる技術は、すでに確立されたと言えます。
一方、すべての人が膨大な情報のすべてを必要とする訳ではありません。建築物の管理者であれば、メンテナンスの情報や設計図などが必要でしょう。消防隊などであれば、災害が発生した場合の進入経路や消火栓の場所などを現場ですばやく入手する必要があるでしょう。このように「ICTコンクリートパネル」から引き出す情報は、どのような目的を持った人であるかによって選択されることになります。
ユビキタス場所情報システムを基本システムとする『電脳コンクリート』では、そのもの自体に格納されている情報は「ucode」のみです。唯一無二の個体識別番号である「ucode」を使用することで、場所は意味を持った場所情報として識別されるとともに、その人の属性(目的)を併せて問い合わせることで、情報の選択的な提供が可能になります。
「ICTコンクリートパネル」によって、コンクリート構造物の品質管理だけでなく、住宅、建築物についてユーザーが知りたい情報をいつでも手に入れられる「建築物トレーサビリティシステム」を確立することができます。
住友大阪セメントが開発した『電脳コンクリート』は、建築トレーサビリティシステムの構築を可能にします。これにより、住宅等の適切な維持管理及びリフォームを行うことによって、長寿命化と省資源化に対応し、何世代にもわたり活用できる社会的資産としての住宅・建築物ストックが形成されると期待しています。
住友大阪セメントでは、より高度なシステムの完成を目指し、事業分野ごとの実証実験を積み重ね、これら以外の分野にも『電脳コンクリート』の技術を展開してまいります。
