ARMは、ワイヤレス、ネットワーク、デジタル家電、イメージング、自動車、セキュリティ、そしてストレージ機器といった高度なデジタル製品のコアとなる技術をデザインしています。ARMが提供する総合的な製品・IP(知的財産)には、16/32 ビット組込みRISC マイクロプロセッサ、データエンジン、グラフィック プロセッサ、デジタルライブラリ、組み込みメモリ、ペリフェラル、ソフトウェア、開発ツールならびにアナログ機能や高速インタフェース製品が含まれます。 ARM は、ARMの幅広いパートナーコミュニティと共に、信頼性の高い製品を迅速に市場へ投入するためのトータルシステムソリューションを、大手エレクトロニクス企業に提供しています。
ARMの起源については、1979年に英国・ケンブリッジ大学の研究者と学生によって設立された、個人用コンピュータの設計会社 Acorn Computers社 に遡ります。
Acorn社の最初の製品は当時としては高速だった、1MHzのプロセッサと12KbyteのROMとRAMを搭載した家庭用コンピュータ「Atom」でした。これを契機にAcornは英国放送協会(BBC)と提携して、英国内でのコンピュータ教育促進の為の製品開発に携わることになり、1982年に「BBC micro」という製品を発表しました。しかしほぼ同時期に、大西洋を隔てた米国のApple社が16bitプロセッサとWindows環境を搭載した製品「Lisa」を発表しました。これを見たAcorn社は「Lisa」を超える製品を開発すべく、研究開発部門に特別プロジェクトチームを編成し、1クロックで1命令を実行できることに着目して、当時としては未だ新しい分野であったRISCアーキテクチャでのプロセッサ開発に着手しました。このチームは僅か12人のエンジニアで編成されたとても小さなものでした。
このプロジェクトの結果、1985年に ARMプロセッサ第1号となった「Acorn RISC Machine:ARM1」が誕生します。このプロセッサは米国VLSI Technology社が3umプロセスで製造、25000に満たないトランジスタ数でした。その後、追加命令セットがサポートされた改良版となる「ARM2」が発表され、「ARM2」はAcorn社のマルチメディアPC 「Archimedes」に搭載されました。
1990年、Acorn社・Apple社・VLSI Technology社の3社による共同事業を行う事が決まりました。これはApple社が開発を進めていた、携帯情報端末(PDA)事業の立ち上げの為に企画されたものでした。共同事業は結果として人材(Acorn)・資金(Apple)・設計・製造技術(VLSI)をそれぞれが投資する形で、同年11月に会社設立という形で結実します。社名は「Advanced RISC Machines Ltd.」、社員はAcorn社からの12人のエンジニアで構成されており、彼らは経営責任者として外部から人材を招聘しました。Acorn社に以前からチップを供給していた関係からモトローラ社に勤務していたRobin Saxbyに白羽の矢が立ち、12人との面談後 CEOとして着任します。

新会社の目標は「低コスト・低消費電力・高性能」を両立できる32bit RISCチップ市場の拡大でした。しかしCEOであるRobin Saxbyは当面の課題として、新会社をどのように運営していくかを決定しなければなりませんでした。選択肢は2つ、1つは有力な半導体会社と合併し、付加価値で収益が上げられる新規事業部門をつくること、もう1つの選択肢は設計と市場調査に専念し、製造を外注先に委託する形での半導体会社になることでした。しかし、ARM社は基本技術となるCPUコアを設計し、半導体設計資産(IP)として、半導体会社にライセンスを供与するというビジネスモデルを確立しました。
このビジネスモデルは、その後 現在のIPライセンス・ビジネスモデルの原型となりました。

ARM社に課せられた、最初の目標はApple社から依頼されたPDA製品の専用チップの開発でした。Apple社はARM社にPDA専用の為の機能実現の為に様々な仕様変更を要求しました。主なるものは完全な32bit命令とビッグエンディアンの対応でした。このチップは「ARM600」という製品で、初めてAppleに採用されました。その後、「Newton」というOSを搭載したPDA製品に採用された「ARM610」が開発されました。

Apple社とのPDAビジネスでの共同プロジェクトを進める傍ら、IPライセンスとしての事業での顧客がようやく獲得できるようになりました。1991年末 英国のGEC-Plessey Semiconductor社が最初のARMプロセッサのライセンスを取得しました。
同時期に日本のシャープ株式会社がApple Newton技術のライセンスを取得したことを契機にARMプロセッサについての関心をもち、1992年に日本で最初にARMのライセンスを取得しました。
1993年 Texas Instruments(TI)社がARM7コアのライセンス契約を取得します。TI社との契約はARM社にとってPC〜PDAへのARMプロセッサの応用が拡大していった状況に更なる変化をもたらしました。TI社はフィンランドのNokia社からの依頼でヨーロッパでの携帯電話(GSM形式)の携帯電話機向けのチップ開発を進めていて、Nokia社からの携帯電話に必要な要件(低コスト・低消費電力・低電圧稼動)を満たす為にこれまでのARM6コアに多くの新機能を追加します。このとき追加された機能で画期的だったものが、Thumb(サム)と呼ばれる、標準的であった命令長(32bit)を半分(16bit)に圧縮できる機能です。この機能はARM7コアから追加されました。これにより、コードサイズの大幅な低減が可能になり、メモリ・キャッシュの使用量を抑えられた為、携帯電話機として必要な省電力を実現することに貢献しました。
Nokia社・TI社でのGSM携帯電話機の成功で、TI社に続いて、韓国Samsung Electronics社等の有力な半導体会社によってARMプロセッサのライセンス取得企業は増えていきました。ARM7以降 携帯電話分野以外でもARMプロセッサの応用は拡がり、それらの仕様・要求性能を満たす為に、追加の命令セットや追加機能のロジックを加えていく形で製品のロードマップを継続させています。

ARM社はARM7・ARM9・ARM10・ARM11という形でCPUコア製品のロードマップを続けてきましたが、最新のCPUコアファミリーとして、Cortexシリーズのラインナップを追加しました。このファミリーは新しいARMの命令セットであるThumb-2を標準仕様としており、Low-End対応のCortex-Mシリーズ(ARM7相当)、Middle-End対応のCortex-Rシリーズ(ARM9相当)、High-End対応のCortex-Aシリーズ(ARM11以上)により各ターゲット・アプリケーションに対応じたラインナップとなっています。既に携帯電話向けのアプリケーションプロセッサ等の用途を始め、採用が拡大しています。
今後もARMコアは多種多様なアプリケーションの要求対応じた製品をラインアップする方向で様々な機能、技術を取り入れていきます。最近ではセキュリティ技術であるTrustZoneや動的に消費電力を制御するIEMに対応した製品のリリースを開始する等、市場からのニーズに対応した製品開発を進めています。
ARMについて詳しくは当社Webサイトをご覧ください。(http://www.jp.arm.com/)